御本尊・不動明王への深い感謝と報恩の念を込めて、柴燈護摩供を通じて修行を行います。

柴燈護摩供とは、山伏修験道の行者が中心となり、自然の中に大地を切り開いて炉を作り、その炉に薪を組み上げ、周囲から柴(小枝や木材)を集めて、炎を高く燃え上がらせる壮大な儀式です。この炉の燃え盛る炎の中に、不動明王をお迎えし、行者が一心に真言を唱えながら諸願成就を祈ります。この秘法は、醍醐派の山岳信仰に基づいた特別な修法であり、古来より多くの修行者や信徒が参加し、その霊力と恩恵を受けてきました。

柴燈護摩供において焚き上げられる炎は、ただの火ではありません。祈りの力によって神聖な霊火となり、参加者一同の煩悩を焼き払い、心身を浄化し、願いを不動明王に届ける媒介となります。この儀式は、自然との一体感を感じながら行う厳しい修行でありながら、その後に訪れる心の安らぎや浄化の感覚は、言葉では表し難いものがあります。

さらに、火渡り修行は、この護摩の儀式の後に行われる特別な体験です。護摩供で燃え盛る火の上を実際に渡ることで、六根清浄(心身の六つの感覚を浄化すること)を体得し、同時に心身の汚れや迷いを焼き尽くします。この火渡りを経て、参加者は精神的にも肉体的にも生まれ変わったような感覚を得ることができ、再び里へと帰り、覚悟を新たにするという「帰峯再生」の精神を体感します。これは単なる儀式ではなく、心の奥底にまで浸透するような深い精神修行であり、多くの人々にとって人生を変える体験となるものです。

この柴燈護摩供と火渡り修行は、不動明王に対する報恩感謝の念をより深く刻み、日常生活における精神的な支えや心の拠り所となる、貴重な修行の機会です。